妖艶の舞…アカクラゲ
きちんとした古文書などに明確に記載があるわけではありませんが、アカクラゲには面白い別名や逸話があって、乾燥させると刺胞が舞い上がり、鼻に入るとくしゃみが出ることから「ハクションクラゲ」と呼ばれたり、戦国武将の真田信繁(幸村)がこれを利用して粉にしたアカクラゲを敵に投げつけて困らせたという話から「サナダクラゲ」と呼ばれている、などといった言い伝えがまことしやかに言われています。
これが本当の事なのか、気になりますよね。
この疑問に答えるため(という動機だったのかはわかりませんが)なんとマウスを使って、くしゃみを使って調べたという論文があります。
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-19710192/19710192seika.pdf
アカクラゲの刺激物質を追え!
研究者たちは、アカクラゲの体から何か刺激的な物質が出ているんじゃないかと考えました。でも、どうやって見つければいいの?そこで思いついたのが、マウスのくしゃみを利用する方法です。
まず、アカクラゲからいろんな成分を抽出しました。その中でも特に注目したのが、「ヘキサン画分」と呼ばれる部分。ヘキサンというのは、油っぽい成分を溶かし出す溶媒なんです。
科学者たちの奮闘
さて、ここからが本格的な探索開始です。研究者たちは、次のような手順で刺激物質を探していきました。
- アカクラゲの抽出物をヘキサンで処理
- 得られたヘキサン画分を、さらに細かく分離
- シリカゲルという特殊な物質を使って成分を分ける
- 逆相クロマトグラフィーという高度な技術で更に細かく分離
この過程で、研究者たちは忍耐強く一つ一つの成分を調べていきました。そして、ついに!マウスにくしゃみを引き起こす物質を発見したんです。
意外な犯人は…
驚くべきことに、くしゃみの原因となった物質は脂肪酸だったんです。脂肪酸というと、普通は体に良いイメージがありますよね。でも、アカクラゲの中には、マウスにくしゃみを引き起こすような特殊な脂肪酸が含まれていたんです。
人が生きていくために必要な成分として、必須脂肪酸があります。これは体内で作り出すことができないので、食べものから取り込む必要があります。
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_eikyou/
この研究の意義は?
この研究は、単にアカクラゲの秘密を明らかにしただけではありません。生物が持つ複雑な仕組みを、生きた動物(この場合はマウス)の反応を使って調べるという新しい方法を示したんです。これは、従来の化学的な分析だけでは見逃してしまうような、生物の総合的な働きを理解するのに役立ちます。
今後の展望
研究者たちは、ここで満足せず、さらに詳しい調査を計画しています。例えば:
自然界には、まだまだ私たちの知らない不思議がたくさん隠れています。アカクラゲの研究は、そんな自然の神秘に迫る一歩となりました。
身近な自然の不思議に目を向けてみませんか?
今日のクラゲ
属名:アカクラゲ
学名:Chrysaora pacifica
著書:ほんわかクラゲの楽しみ方
「ほんわかクラゲの楽しみ方・ゆらゆら、ふらふわ。眺めて、癒される。」
クラゲの柔らかで優しい魅力と不思議な生態をわかりやすく伝える、
クラゲ初心者にもお勧めの一冊です。
・平山ヒロフミ著
・アクアパーク品川監修
・誠文堂新光社