他のクラゲとはココが違う!?…インドネシアンシーネットル
和名:インドネシアン・シーネットル(インドネシア・シーネットル)
英名:Indonesian sea nettle / Malaysian Sea Nettle
学名:Chrysaora chinensis
ふわりと漂う白い姿で多くの水族館ファンを魅了している「インドネシアンシーネットル」。
でも実は、このクラゲ、同じChrysaora(クリサオラ)属の仲間とは、ちょっと違った特徴を持っているんです。
今回は、最新の研究をもとに、「Chrysaora(クリサオラ)属のクラゲとどこが違うの?」という視点から、インドネシアンシーネットルの魅力に迫ります!
クリサオラ属ってなに?
インドネシアンシーネットルは、クラゲの分類でいうと「クリサオラ属(Chrysaora)」に入ります。このグループには、「パシフィックシーネットル(Chrysaora fuscescens)」や「アトランティックシーネットル(C. quinquecirrha)」など、有名な大型クラゲがたくさん。
でもインドネシアンシーネットル(C. chinensis)には、彼らとは違う「独自の特徴」があるんです。
見た目がちょっと違う? 〜形のひみつ〜
最近の研究では、マレーシア周辺で採集されたインドネシアンシーネットルを細かく観察した論文があり、他の仲間と比べた結果、いくつかユニークな違いがわかってきました。
✔️ 傘の形とふちの「小葉(しょうよう)」の数
クラゲの「傘」と呼ばれる部分のふちには、小さな突起(=小葉)が並んでいます。インドネシアンシーネットルはこの小葉の数や並び方が、他のクリサオラ属とちょっと違うのだとか。
🔍 小葉(しょうよう):クラゲの傘の縁にあるひらひらした部分。種類ごとに数や形が違うので、見分けるヒントになります。
✔️ 触手(しょくしゅ)の配置や、口の周りの腕(口腕)の形も独特
餌を捕まえるときに使う触手や、食べ物を口に運ぶための「口腕(こうわん)」という部分も、他の種と比べて長さや本数、配置が違うことがわかっています。
同じクラゲでも場所によって“顔つき”が違う?
面白いことに、マレーシアの西海岸と東海岸に住むインドネシアンシーネットルを比べると、形に違いがあるそうです。
これは、おそらく海の環境(水温や塩分、潮の流れなど)が違うことに適応しているためと考えられています。
「同じ種でも住む場所によってちょっとずつ違う」というのは、生き物の進化の面白いところですね。
生息地の違いのナゼ?
インドネシアンシーネットルは、主にインドネシアやマレーシアの温かい海に分布しています。
他のクリサオラ属の仲間が、太平洋や大西洋に多く生息しているのに比べると、“東南アジア中心”という珍しい生息地も特徴的です。
まとめ:見た目だけじゃない、奥深いクラゲの世界
白くやさしい見た目とは裏腹に、毒針で巧みに餌を捕まえ、環境に応じて形を変え、他の生き物と共生する――。
インドネシアンシーネットルは、ただ“美しい”なだけじゃありません。
知れば知るほど奥が深く、他のクラゲとの違いが見えてくる、とても興味深い海の生き物なんです。
水族館などで見かけた際は、その白く揺らめく姿に目を奪われるだけでなく、
「他のクラゲとこんな所が違うんだね」と思いながら眺めてみてくださいね。
●参考にした情報
- 男鹿水族館GAO:インドネシアンシーネットルの紹介
- ResearchGate:Chrysaora chinensis の形態評価に関する論文
- 広島大学:クラゲの共生関係に関する観察記録(BIOSPHERE 2017)
論文紹介: Chrysaora chinensis の形態的差異
論文タイトル: A morphological evaluation of Chrysaora chinensis of Peninsular Malaysia and distinguishing its populations using geometric morphometrics.
論文リンク: https://doi.org/10.1007/s13131-019-1483-6
要約:
この研究では、マレーシア半島の異なる地域から採集されたインドネシアンシーネットル(Chrysaora chinensis) の形態的差異を調査しました。幾何学的形態測定法を用いて、東海岸と西海岸の標本間で特に大きな形態的差異が見られたことが示されました。これにより、地域ごとの個体群の違いが明らかになりました。
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