触手の赤い曲線が美しい…アカクラゲとハシブトウミカラスの良い関係

アカクラゲ

特徴のある放射状に触手の赤い曲線が美しい…。
アカクラゲは、傘の中心から放射状に延びる模様と、独特の濃い赤色に特徴があるので、覚えやすいですね。
いかにも危険であることを周りにアピールしているかのようです。

特に触手の曲線と、透明な触手の中を通る赤い線に注目してください。
一本の血管がそこを通っているような繊細な造形をしています。
この触手には数えきれないほどの毒針が仕込まれていて、小さな魚は麻痺して動けなくなるほどの強さを持っています。
人が触れると痛みを感じるほど。

学名:Chrysaora pacifica
属名:アカクラゲ(赤水母)

アカクラゲの生態に関する面白い話として、クラゲが海洋生態系に与える影響についての興味深い研究があります。
国立極地研究所の研究によると、クラゲの増加が海鳥の餌取り行動にプラスの影響を与えていることが明らかにされています。

この研究では、ベーリング海でクラゲの増加が報告されている地域で、海鳥の一種であるハシブトウミガラスに小型ビデオロガーを装着し、水中の行動を観察しました。その結果、クラゲの触手に小魚が集まっていることが確認され、ハシブトウミガラスがこれらの小魚を頻繁に餌として捕食している事実が明らかになりました。

クラゲは動物プランクトンを餌として大量に消費し、食物連鎖を通じて魚類や海鳥類、海生哺乳類にマイナスの影響を及ぼすと考えられています。しかし、この研究は、海鳥がクラゲを餌取りに利用していることを示し、クラゲの存在が海鳥の餌取りにプラスの影響をもたらしていると結論付けました。ハシブトウミガラスがクラゲに集まる小魚を餌としているんです。何と頭の良い!!。アカクラゲの周りに小魚がたくさんいるのを確認して捉えているようです。
下手に近づくとアカクラゲに刺されるリスクも知っていて、たくさん小魚が見られないと捕食に行かないという判断をしているのかもしれませんね。

クラゲの生態が生態系に与える影響は、海に住む生き物だけではなく、鳥の生態系にも影響を与えている可能性があるなんて奥が深い…。
あくまでも勝手な想像ですが、アカクラゲが直接的に被害を与えるからと言って単純にアカクラゲ退治をすると、ハシブトウミカラスの減少に波及します。その結果、ハシブトウミカラスが天敵だった生き物が大量発生する、なんてこともあるかもしれません。

研究チームは、海鳥の水中での行動・生態を「鳥の目線」で観察するため、米国アラスカ州プリビロフ諸島セント・ジョージ島に繁殖する海鳥ハシブトウミガラスUria lomviaを対象として、新たに小型化したビデオロガー(14.5 g:リトルレオナルド社製、従来のものに比べ半分の重量に小型化)を装着、4個体から計97回の潜水映像を記録しました。ハシブトウミガラスは、時には3分以上かけて水深100m以上潜り、魚やイカ、オキアミなどを捕食する潜水性の海鳥です。
ハシブトウミガラスに装着した小型ビデオロガーから得られた映像には、3m以上の触手を持つアカクラゲの一種Chrysaora melanasterとの遭遇が高頻度(全潜水回数の約85%)で観察されました。それと同時に、ハシブトウミガラスが、クラゲの触手周辺に集まっている小魚、主にスケトウダラの稚魚(写真2)を捕食していることが確認されました(全捕食回数の約20%が該当)。また、ハシブトウミガラスは、クラゲに集まっている魚の数が多いほど高確率で捕食に挑んでいる傾向が見られました)。より高い確率で捕食を成功させるため、クラゲに集まっている魚の数を認識し、捕食に挑むか否かを決定していることが示唆されました。

引用:クラゲを利用して魚をとる海鳥│研究成果│国立極地研究所. https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20150826.html.

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