クラゲは未来の“魚のごはん”になる!?—アカクラゲ

クラゲは未来の“魚のごはん”になる!?
〜海に漂うクラゲの、意外な栄養の話〜
ふわふわと水中を漂うクラゲ。
水族館では「美しい生き物」として見られることが多いですが、実はいま、クラゲを養殖魚のエサに活用できないか、という研究が進んでいます。
今回紹介する論文は、クラゲの栄養成分に関する65件の研究をまとめ、「クラゲは水産養殖用の飼料原料として使えるのか?」を調べたレビュー論文です。
結論から言うと、クラゲは魚粉の代わりになる“主食級のエサ”というより、足りない栄養を補う“海のサプリメント素材”として期待されています。
クラゲってほとんど水分
クラゲの体はほとんどが水分で、95%が水分といった種類が多いんです。
そのため、そのままエサにするには乾燥や保存、運搬に手間がかかります。でも、水分を除いて中身を見てみると、意外な栄養が含まれていることがわかってきました。コラーゲン由来のアミノ酸、タウリン、脂肪酸、ミネラルなど、魚の成長や健康に関わる成分が含まれているのです。
注目ポイント1:コラーゲン系アミノ酸
クラゲの体を支える大切な成分のひとつがコラーゲンです。
そのため、グリシン、プロリン、ヒドロキシプロリンといった、コラーゲンに多いアミノ酸が目立ちます。
🔍 身近な食材でいうと?
ゼラチン、煮こごり、鶏皮、魚の皮、牛すじなどを思い浮かべるとわかりやすいです。
これらの成分は、魚の体づくりや腸の健康、成長の効率に関わる可能性があります。
注目ポイント2:タウリン
クラゲには、タウリンも含まれています。
タウリンと聞くと、栄養ドリンクを思い浮かべる人も多いかもしれません。
でも自然界では、魚介類に多く含まれる成分です。
🔍 身近な食材でいうと?
イカ、タコ、ホタテ、牡蠣、魚介類など。
タウリンは、魚の成長やエサの利用効率に関わる可能性があり、魚粉を減らした飼料を作るうえで注目されています。
注目ポイント3:ARAという脂肪酸
クラゲは脂が多い生き物ではありません。
でも、脂肪酸の中にはARA、EPA、DHAなど、魚の健康に関わる成分も含まれています。
特に論文では、ARA、つまりアラキドン酸がクラゲらしい特徴のひとつとして紹介されています。
🔍 身近な食材でいうと?
ARAは卵黄、肉類、魚などに含まれる脂肪酸です。
EPAやDHAは、青魚に多い成分としてよく知られています。
ただし、脂肪酸は多ければよいというものではなく、魚の種類や成長段階に合わせたバランスが大切です。
ミネラルも意外と豊富
クラゲには、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛などのミネラルも含まれています。
🔍 身近な食材でいうと?
カリウムはバナナや芋類、豆類。
マグネシウムはナッツや海藻、豆類。
亜鉛は牡蠣、肉、魚介類などに多く含まれています。
魚のエサでも、ミネラルは成長や体調維持に欠かせない栄養です。
クラゲは、その補助素材としても可能性があると考えられています。
でも、課題もあります
もちろん、クラゲをすぐに万能のエサにできるわけではありません。
大きな課題は、水分が多すぎること。
乾燥させるには手間とコストがかかります。
また、灰分と呼ばれるミネラル分が多いことや、加工方法によってはアルミニウム濃度が高くなる可能性も指摘されています。
さらに、クラゲは種類や採れた場所、季節によって成分が変わりやすい生き物です。
安定したエサにするには、加工方法や品質管理の研究がまだ必要です。
クラゲは“厄介者”から“資源”へ?
クラゲは大量発生すると、漁業や養殖、観光などに影響を与えることがあります。
でも見方を変えると、海に大量に現れるクラゲは、まだ十分に使われていない海の資源でもあります。
この論文が面白いのは、クラゲを「困った生き物」としてだけでなく、魚を育てるための新しい素材として見直しているところです。
まとめ
クラゲは、魚粉の代わりになる完全な主食ではありません。
でも、コラーゲン系アミノ酸、タウリン、ARA、ミネラルなどを含む、個性的な“海の補助食材”として期待されています。
水族館で見るクラゲは、ただ美しく漂っているだけではありません。
その透明な体の中には、未来の養殖や、海の資源利用につながるヒントが隠れているのかもしれません。
次にクラゲを眺めるときは、
「この生き物が、魚たちの未来のごはんになるかもしれない」
そんな視点で見てみると、少し違って見えてきませんか?
参考論文
Guttuso, P. et al. (2025).
Is jellyfish a suitable ingredient for aquafeed? A comprehensive review of nutritional potential and limitation.
Frontiers in Marine Science, 12.
doi: 10.3389/fmars.2025.1539725
The Colors of Jellyfish
(c)2024 Hirofumi Hirayama
[kurage@jfish.net](mailto:kurage@jfish.net)
https://kurage.aquariuming.com/
著書:ほんわかクラゲの楽しみ方
「ほんわかクラゲの楽しみ方・ゆらゆら、ふらふわ。眺めて、癒される。」
クラゲの柔らかで優しい魅力と不思議な生態をわかりやすく伝える、
クラゲ初心者にもお勧めの一冊です。
・平山ヒロフミ著
・アクアパーク品川監修
・誠文堂新光社
・Amazonに見に行く
Instagram:
